ミニ保険や少額短期保険って何?その違いと選び方

近年、ミニ保険(少額短期保険)という言葉を目にする機会が増えています。

少額短期保険業者の数や収入保険料(会社で言うところの売上)は右肩上がりで増えており、一般の保険会社が扱わないようなユニークな商品も多いため、ミニ保険については最低限のことを知っておきたいところです。

そこで、今回はミニ保険の基礎的な知識について解説します。

ミニ保険(少額短期保険)とはどんな保険?

ミニ保険とは「少額短期保険」の通称で、文字通り保険会社の販売する商品と比べて保険金額が少額で、かつ保険期間が短いというのが特徴です。

保険金額は最高で1000万円(保険の種類によって異なります)、保険期間は2年までとされており、1年以上契約するときは更新という扱いになります。

ミニ保険を扱っているのは金融庁から免許を与えられた「保険会社」ではなく、財務局に登録した少額短期保険「業者」です。実際は保険会社のグループ会社であることも多いですが、この違いも意識しておいてください。

ミニ保険で扱われている商品で多いのは以下のグラフのとおり、賃貸住宅の火災保険(家財保険)とペット保険です。ただ、少額短期保険の特徴は以下のグラフにある「費用・その他」に該当する商品にあります。この点は後述します。

引用元:2018年度 少額短期保険業界の決算概況について|日本少額短期保険協会

なお、SNSのLINEから加入できる保険やコンビニで加入できる保険はミニ保険ではありません。手軽に加入できるので混同しがちですが、これらは保険会社の商品です。

具体的にはどんな保険があるの?

次に、ミニ保険にはどんな商品があるのか具体例を挙げて解説します。

商品名業者名保険の種類
「いぬとねこの保険」日本ペット少額短期保険ペット保険
「トリップキャンセル」AWPチケットガード少額短期保険その他
「イオンの家財保険」イオン少額短期保険火災保険(家財保険)
「チケットガード」AWPチケットガード少額短期保険その他
「子宝エール」アイアル少額短期保険医療保険
「痴漢冤罪ヘルプコール付き 弁護士費用保険」ジャパン少額短期保険弁護士費用保険

ペット保険「いぬとねこの保険」

日本ペット少額短期保険が販売する「いぬとねこの保険」は、文字通り犬と猫のみを対象としたペット保険です。

「プラチナプラン」「ゴールドプラン」「パールプラン」の3種類があり、プラチナプランは通院・入院・手術のすべてを対象としていますが、ゴールドプランは通院、パールプランは手術のみが補償の対象です。

また、パールプラン以外は「90%プラン」「70%プラン」「50%プラン」の3通りから選ぶことができます。90%プランならかかった治療費の90%を保険金として受け取ることができますが、保険料はその分高くなります。

なお、ペット保険は基本的にどの商品も1年更新ですが、加入している間に病気にかかると更新できなかったり、特定の病気について補償されなかったりすることがあります。加入するときは必ず更新の条件を確認してください。

病気やケガなどで旅行に行けなくなったときに役立つ「トリップキャンセル」

AWPチケットガード少額短期保険が販売する「トリップキャンセル」は、病気やケガ、交通機関の遅延、家族の入院などの理由で旅行をキャンセルしたときにかかるキャンセル料を補償する保険です。

旅行代金が10万円の場合、「補償プラン100%」なら保険料は2870円、「補償プラン50%」なら保険料は1510円です。通常、旅行当日のキャンセル(連絡あり)は旅行代金の50%のキャンセル料がかかるので、それを考えると決して高い保険料ではないでしょう。

なお、対象となるのは募集型企画旅行および受注型企画旅行などに限られているので注意してください。

賃貸住宅向けの火災保険「イオンの家財保険」

イオン少額短期保険が販売する「イオンの家財保険 賃貸プランWide」は、火災や落雷、風災など火災保険で一般に補償される項目を幅広く対象としており、かつ「臨時費用」「残存物取片付け費用」などの補償もついているため補償が充実しています。

もちろん、賃貸住宅では加入が必須となる借家人賠償責任補償や個人賠償責任補償もあります。

ただし、風災と雪災は20万円以上の損害が生じたとき、水災は30%以上の損害が生じたときなどの条件がついているので注意が必要です。

また、少額短期保険は先述のとおり、保険金額は最高で1000万円までと決められています。借家人賠償責任補償や個人賠償責任補償についてそれ以上の金額が必要な物件では注意が必要です。

行けなかったライブなどのチケット代が補償される「チケットぴあ チケットガード」

「チケットぴあ チケットガード」は「トリップキャンセル」と同様、AWPチケットガード少額短期保険が販売する保険です。急な病気やケガ、家族の入院などが原因でライブなどのイベントの観覧・参加ができなかったときのチケット代が補償されます。

保険料はチケット代が5000円なら560円、1万円なら870円とやや高いですが、急な出張や同行者が原因の場合も補償の対象になるので検討の余地はあるでしょう。

不妊治療中でも加入できる医療保険「子宝エール」

不妊治療中の女性は医療保険に加入できなかったり、加入できても条件がついてしまったりすることが一般的です。しかし、アイアル少額短期保険の「子宝エール」は不妊治療中でも加入できます。

子宝エールは不妊治療が終わったあと、不妊治療に関する特約を削除し、通常の医療保険として契約を更新することが可能ですが、5年ごとに保険料が上がるので注意してください。また、入院の保障は5日以上の入院が条件となります。

痴漢冤罪事件に巻き込まれたときに役立つ「痴漢冤罪ヘルプコール付き 弁護士費用保険」

ジャパン少額短期保険が販売する「痴漢冤罪ヘルプコール付き 弁護士費用保険」は、痴漢と間違われたときに、弁護士に電話で連絡して現場に駆けつけてもらうことができる保険です。

2018年の実績では、ヘルプコールをして弁護士から連絡が来るまでの平均時間は約4分と非常に短いです。また、疑いを晴らすために必要となった法律相談費用や弁護士費用などを保険金として受け取ることもできます。

なお、痴漢冤罪以外の離婚問題や相続、リストラなど一般的なテーマについての法律相談を年に3回まで無料で利用できるという特典もあります。痴漢冤罪事件に巻き込まれることに不安を感じる方なら検討の余地は十分にあるでしょう。

ミニ保険(少額短期保険)のメリット・デメリット

これまでの説明で、ミニ保険がどんな保険かイメージがつかめたでしょうか。ここではミニ保険のメリットとデメリットについて、改めて整理します。

ミニ保険(少額短期保険)のメリット

まず、メリットは以下の2点です。

ニッチなニーズに対応した商品がある

少額短期保険の最大の特徴は、保険会社では販売していないニッチでユニークな商品があることです。

家財の保険やペット保険は損害保険会社でも販売していますが、チケット代の保険や痴漢冤罪対策の保険といった商品は少額短期保険業者しか扱っていません。こうしたユニークな商品は他にもたくさんあります。

気軽に加入できる

少額短期保険は保険金額が少額なことから保険料が安い商品が多いため、気軽に加入できるというメリットもあります。ただし、医療保険やがん保険の場合は条件をそろえて比較すると、保険会社の商品と比べて安いとは言えないので注意してください。

ミニ保険(少額短期保険)のデメリット

ミニ保険にはデメリット(注意点)がいくつかあります。メリットだけにとらわれず、デメリットについてもよく理解しておいてください。

更新型なので保険料が上がる

ペット保険や医療保険など、継続して加入することを前提としている商品は定期的(5年ごとなど)に保険料が上がります。保険料の支払いが難しくなって解約せざるを得なくなるということがありうるので、加入する時点で将来の保険料がいくらくらいになるのか把握しておきましょう。

保険金額に上限がある

すでに説明しているとおり、少額短期保険は保険金額の上限が1000万円までと決められています。賃貸住宅向けの保険に加入する場合は注意してください。

生命保険料控除の対象とならない

生命保険会社の商品は、支払った保険料の全部または一部を「生命保険料控除」として扱うことができて節税になります。しかし、少額短期保険の保険料は対象になりません。

話題になっている「わりかん保険」もミニ保険

株式会社 justInCaseという少額短期保険業者が販売する「わりかん保険」は、保険料があとから決まるというこれまでにないタイプのがん保険です。

わりかん保険にはあらかじめ決められた保険料というものがありません。保険料はがんになった人に支払った毎月の保険金を合計し、契約者の数で割った金額に管理費相当額を上乗せすることで決まります。そのため、後払いとなります。

こうした保険は日本では初めてですが、欧米や中国では先例があるため日本でも成功する可能性は十分にあります。ただし、現時点では実験段階なので、本格的ながんの備えとして利用するのは時期尚早と言えるでしょう。

まとめ

ミニ保険は生涯の保障(死亡保障や医療保障)を得るために利用するのはやや難しいですが、短期間のニッチな保障を得るうえでは役立つ商品です。

ただし、一般の方が気付きにくい落とし穴のある商品もあります。ネットで評判を調べたり、詳しい人に聞いたりして確認する慎重さも必要であることは覚えておいてください。